就活ハラスメントの実態調査をふまえて
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検討会メンバーのコメント掲載
『就活ハラスメント検討会』では、学生(就活生)並びに就活相談員の皆さんに対し、就職活動中のハラスメントの実態調査(2022 年 11 月~2023 年 1 月)を行い、第1次報告を行いました。この結果をふまえて、各分野の専門家である検討会メンバーのコメントを掲載します。
※第1次報告プレスリリースはこちら

採用側の「哲学」と「リスクマネジメント」が問われている

(座長)廣川 進 / 法政大学 キャリアデザイン学部 教授
これからの社会や企業は、性別、国籍、障がい、さらにはライフスタイルや価値観などの違いをも認めるダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の理念を浸透させていく必要があるでしょう。多様な人々の個々の特性が尊重され活かされる企業活動は創造的な価値を生み出し、生産性にも効果を与えるとされています。今回の調査で明らかになってきた就活ハラスメントの現実は、SNS時代にあって、たった一人の面接官の言動が企業の信用を揺るがすリスクとして認識すべきであることを示しているのではないでしょうか。

就活生へのハラスメント防止は企業と社会の責任です

(アドバイザー)川上 憲人 / 東京大学大学院 医学系研究科 特任教授
人権を守って企業活動を行うことは企業の責任です。就活生へのハラスメント防止は企業が行うべき責務であり、採用担当者のみならず、企業に所属するすべての者が就活生へのハラスメントを行わないように責任ある対応をすることが必要です。就活ハラスメントは就活生に心の傷を負わせ、有能な人材の将来の活躍の芽を摘んでしまうことになる場合もあります。日本の活力を維持するためにも社会として就活生へのハラスメントをなくすことが大事です。

要注意、留学生の就活ハラスメント対策

下岡 郁 / 武蔵野大学 客員教授・北京語言大学東京校 非常勤講師
留学生は就労ビザや日本語力の問題など、日本人の学生より就職環境が厳しいです。これらの留学生の不利な立場を利用して、就活生に対してハラスメントを行う企業はあります。特にハラスメントに関する法整備が遅れている国や地域に本社のある日本子会社等においては、採用担当者のみならず、マネジメント層のコンプライアンス意識も低いです。今後、留学生に対する個別支援を行う必要性があると認識しております。

就活ハラスメント、学校側も強く非難を

津野 香奈美 / 神奈川県立保健福祉大学大学院 ヘルスイノベーション研究科 准教授
相談員を対象にした調査で、多くの学校が就活ハラスメントに対し組織的対応を取っていないことがわかりました。学生を受け入れる側である企業が対策を進めることはもちろんですが、学生を送る側である学校も「学生を守る」という意識を高める必要があると感じます。就職活動中に学生に不適切な言動を行った企業に対し抗議する、次年度の就職説明会への参加を断る等、学生を泣き寝入りさせない取り組みを考える必要があります。本調査をきっかけに、様々な立場から、就活ハラスメントが発生しない環境づくり、そして発生してしまった場合の対応整備について議論が進むことを願います。

マイノリティ就活生も安心できる相談対応体制の整備が急務

中島 潤 / 認定特定非営利活動法人 ReBit
就活ハラスメントが起きた場合、特にマイノリティの就活生は「相談できない」という困難を経験することがあります。今回の調査で、「心身に障がいがある/性的マイノリティである」と回答した就活生が、ハラスメントを受けても相談しなかった理由としては、「相談先は知っていたが解決しないと思ったから」「相談することで不利益になると思ったから」という項目の割合が高くなっています。また、ハラスメント後に休学や退学につながっている事例も確認されます。ハラスメント防止の取り組みと並行して、ハラスメントが起きた時に、マイノリティも含めた全ての人が安心して相談できる相談対応体制の整備と、適切に対応できる支援者の養成が急務です。

「不法行為」が続出、企業は急ぎ防止の対策を

原 昌登 / 成蹊大学 法学部 教授
面接官やリクルーターの言動が就活生の人格を傷付ければ、不法な行為=「不法行為」として賠償責任が生じます。そして企業も面接官たちの「使用者」としての賠償責任を免れません(使用者責任)。就活ハラスメントも、従業員同士のハラスメントと同じく、法律問題となるのです。確かに選考試験をどのように行うかは企業の自由です。しかし、差別や暴言など、就活生の存在や人格を否定し傷付けることは絶対に許されません。賠償責任はもちろん、社会的な信用の低下も避けられないでしょう。今回の調査では多くの「不法行為」が見られました。採用活動に関わる社員に対してあらためて周知啓発を行い、就活ハラスメントの防止を徹底しましょう。

社会との出会いの場をより良いものへ

垂水 菊美 / 東京大学 教育・学生支援部 学生相談支援課 
キャリアサポートチーム特任専門職員(キャリアアドバイザー)
学生にとって社会との初めての大きな出会いの場である就職活動において、違和感・不快感を受けるハラスメントは、その後の自己成長を阻むことになりかねません。彼らがその後のキャリアを主体的に形成することを目指すためにも、日常的に学生のキャリア相談を受けている経験から、就活ハラスメントを防止する取り組みの必要性を痛感しています。
まずは気軽に違和感や不快感を相談できる環境をつくること。そして、多様性を受容し、個々を尊重する社会を目指すべく、真摯に問題と向き合う対応をすること。それが彼らの成長への支援になると考えます。

企業が気づかなくても学生は傷ついています

木村 節子 / 東洋大学 国際学部 非常勤講師
家族欄にひとり親の氏名や職業をかけず戸惑う学生、女性はね・・・の言葉を何度も聞かされて社会に憤りを感じる学生、他社辞退と引き換えに内定を出すと言われて泣きながら相談にきた学生。企業にとって無自覚な行為であっても、学生にダメージを与えていることはないでしょうか? 社会経験がないから、若いからと不遜な扱いをすれば、学生は大きく傷つきます。それ以前に、そういう行為は、社内にある体質・風土が学生に向かっているともいえるのではないでしょうか。就活ハラスメントは、社内のハラスメント対策と同様と捉え、企業及び採用部門はしっかり対策を打ってほしいと思います。

お問合せ

名称 就活ハラスメント検討会
(座長 法政大学 廣川進教授)
担当 事務局 新谷、木村
mail shukatsu-harassment-kentokai@oasis3.com
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